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『季節のお飯ごと』特集にあたり、茶の湯の懐石料理について、裏千家・茶道資料館の学芸部長、赤沼多佳先生よりお話をうかがいました。
「茶の湯の懐石料理の基本となるものは、飯、汁、向付、椀物(煮物)、焼物、八寸、香の物、湯桶の八品で、これに強肴と呼ばれる料理が何品か付くのが現代の懐石料理のスタイルです。特に関西では煮物とは椀物を指し、汁のない煮付けた料理は強肴に含まれます。ですから、厳密に言えば、『飯ごと』の煮物は、懐石料理の中では強肴に含まれるのですが、家庭料理としては、分けた方がわかりやすいでしょう。
現在は料理屋で出される懐石料理が主流となっており、贅沢な素材や品数の多さを思い浮かべますが、本来のお茶事の料理としての懐石は、急な来客をもてなすことが基本となるため、豪華な料理とは限りません。むしろ私が考える茶事料理の要点は、近所で手に入る材料(必然的に旬の物になります)を使ったものであること、そして作り手である奥様の個性が盛りつけや味付けに生かされていること、それと同時に心があることが大切になってきます。たとえば、夏に催される朝茶のときは、向付に生の魚は使いません。どんなに新鮮であっても、前日の魚だからです。そのため、たとえば干物の魚をほぐして、薬味と合わせて一手間掛けたり、アスパラガスのおひたしに少しボリュームのあるごまだれを掛けたものを向付としてお出しします。それは、相手に対する思いやりと作り手のセンスが献立にも生かされるということです。その意味では、懐石料理は究極の家庭料理とも呼べるでしょう。
私自身が、そのような考えを持っているせいか、瀬津さんの『飯ごと』を拝見したとき、まさに懐石料理の本質を突いているなと感心いたしました。洋食や肉料理を使われているのも、時代に合っていますし、身近で手に入る旬の素材をシンプルな料理方法で手早く調理する点なども気付かされるアイデアがたくさんあります。料理はセンスであることを再認識し、早速そのアイデアを私も活用させていただこうと思っております。
ただ、手間も時間もお金もかけない分だけ、その人自身のセンスが現れる料理はある意味で恐いところもあります。美味しい料理を作るためには、日頃から材料を調達できる行きつけの店を見つけておいたり、また自分も美味しい物(高価なものとは限りません)をいただいて、舌を鍛えておくことも大切です。みずからの舌を鍛えることは、料理のデッサンであると思っています。改まって料理を勉強するのではなくて、日頃からの心がけが美味しい料理を作るといえるかもしれませんね」
取材・構成:瀬津由紀子
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