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編集部より:日本ではちょうどゴールデンウィークの頃、茶商・兼子さんは春茶を求めてさまざまな産地に足を運んでいました。編集部の都合でお休みしていたので、今回は2回分をまとめてご紹介します。
冷害のおかげで収穫量は減ったとはいえ、品質的には例年以上の所もあり、兼子さんも腕の見せ所。いつもながら、お茶を巡る茶農家の方々の熱意、また茶商としての兼子さんの真摯なが姿に感動します、
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4/27
文山地区石碇の陳樹根名人に会いに行き、頼んでいた春茶を仕入れて来ました。当日は花曇りの一日で坪林や石碇では茶畑で茶摘み女が茶摘みする風景が至る所で見られました。
先に坪林の鄭さんの店に寄り、春茶の入荷状況を聞きます。鄭さんは妻と古い付き合いの茶商で、台北市内にも店補を持つ老舗の文山包種を扱う茶商です。
店内には12〜13種類のお茶が、20〜30斤1袋にして並べられています(一斤=600g)。昔からの伝統的な卸問屋の風情を感じさせる店です。試飲も、1度に5〜6種類を同時にします。
大きな茶碗(日本のご飯茶碗より大きい)に茶葉を2〜3g入れ、熱湯を注ぎ、茶葉が完全に開くのを待ちながら茶葉の観察や湯色を確かめます。茶葉が開いた順にレンゲを使い香りと味を吟味します。その間無言で、張り詰めた空気が店内に漂います。試飲して此方から質問しなければ、鄭さんから説明はありません。
私はこの様な緊張が好きで、茶葉の良し悪し、品種、価格を値踏みして交渉に入る過程は、最高に生きがいを感じる瞬間です。春茶は6種類あり、今年はまだ入荷量は少なく、1週間後には最盛期に入るとの事です。台湾のお客様向けに2種類を仕入れて鄭さんの店を出ます。
陳さんの店に到着して昼食を食べますが、陳さんは外出中で居ません。奥さんが携帯で呼ぶと、2時頃に戻るとのことです。「今日は茶摘みをして製茶をするから見て行きなさい」と奥さんが言います。店から茶畑を見ると、陳さんの弟夫婦が茶摘み(機械摘み)をしています。
見学に行き、手摘みをしている3人の茶摘み女(60歳過ぎのお婆さんばかり)と話をしました。
日本語と台湾語と北京語で楽しい会話でした。写真をお願いしても恥ずかしがり、撮らせて貰えません。作業風景を撮り、お礼を言い、急勾配の坂道を上って店に戻ると、もう弟夫婦は日光萎凋を始めています。茶葉は金萱です。丁寧に素早く茶葉を広げて、花曇りの日光に当てます。最高の条件だそうです。生茶葉で百数十斤余りですが、製茶すると20数斤から30斤になってしまします。間もなく手返しをして、茶葉の水分を飛ばし、発酵を促進させて約1時間後には室内萎凋(いちょう)に移ります。
丁度その頃、陳さんが帰ってきました。茶葉の状態を素早く観察して、なにやら指示をしてからの挨拶になります。製茶が始まったばかりで青心烏龍の包種は量が少ないと言いながら早速6種類を試飲しました。いつも
ながら陳さんのお茶は一味違います。愛飲家を惹きつける品格と個性ある風味は、名人の名に相応しい銘茶です。4種類のお茶を決めましたが時間がかかりました。
陳さんが最後に「試飲して」と淹れたお茶は新しい味香りの包種茶でした。
青心烏龍包種に比べ香りは少し控えめで味はキリッとして濃厚に感じます。軽やかさ、爽やかさ、とまた違った風味を持つ、武夷山烏龍種包種です。これから市場に出てくる新しいタイプの包種でしょう。近年植樹され始めた武夷山烏龍種の茶葉で製茶した包種茶です。
日が傾き始めました。製茶を最後まで見学するには夜中になります。店と隣接した製茶工場からは、発酵した新緑の茶葉の香りがむせ返る程に発散し、ぼつぼつ殺青作業にかかる事でしょう。 |
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陳茶師の茶園
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茶摘み風景
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製茶工程(日光萎凋)
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製茶工程(室内萎凋)
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5/2
朝6時に自宅を出発です。天候は晴れ。妻と2人で今日、明日の2日間を「霧社〜蘆山〜合歓山〜大禹嶺〜梨山」に仕入れに出張です。
4/30夜に大きな地震があり、余震がまだ続いていますが、国道8号線や14号線は開通しています。所々に落石がありますが、交通には支障はなく交通量も普段と変わりない様です。
国道8号線を、国立公園太魯閣渓谷を過ぎ、西寶に着きます。海抜1000mの地点で少し肌に寒さを感じます。国道沿いに水果畑があり、働いている農夫がいます。車を止めて、「西寶に茶畑や茶農はいますか?」と尋ねますと「いないし茶畑もない」との返事です。最近、西寶には茶畑や茶農が居ると花蓮で聞いた情報の確認です。
大禹嶺に到着して、蘇さん夫婦の店で休憩します。ここから右にトンネルを潜り、8号線を行けば、左側の山の急斜面に大禹嶺茶畑が2箇所確認出来ます。そこから約30kmで梨山に着きますが、今日は大禹嶺から14号線に左折し、合歓山(約3250m)に向かいます。目の前に合歓山は見えていますが、頂上までは急勾配の坂道で、アクセルを全開してもスピードは出ず、空気は薄く愛車には過酷な一時です。合歓山一帯はアルプスの高原を思わせる風情で、台湾中央山脈の中で1番「美しい山」と言われ年間を通し人々が訪れます。
今の季節は、途中で所々に「石楠花」(しゃくなげ)が満開です。車寄せに停車し、上着を着て外に出ます。肌を刺す寒さを感じながら、雄大な自然のお花畑を鑑賞します。百年以上を生き抜いた「石楠花」が色とりどりに鮮やかに見事に咲き誇っています。
妻と2人で下界の全てを忘れ海抜3000m近い高原のお花畑に至福の時を過ごします。霧が出て来たので車に戻り、再び頂上を目します。
頂上は霧で視界は0に近く、南投県に入り今度は急勾配の下り坂で、翠峰に着きます。翠峰茶は未だ始まりません。1週間後でしょう。この辺りは海抜2000m前後です。もう少し下に李茶農の自宅兼製茶工場・清境農場がある有名な観光地です。
大茶農の茶師 李 正弘氏は、この辺りでは1番大規模な茶農です。所有する茶園面積は8ヘクタールで霧社〜蘆山〜紅香〜翠巒〜清境などに茶園があり、年間の生産量は5〜6000斤と言われ、台湾全土の茶商が訪れます。
正弘氏は不在ですが奥さんが笑顔で迎えてくれます。長男の正史氏が茶師達を束ねています。台北の茶商の先客でした。今日製茶されるお茶を買いに来たと言います。午後1時半になり、遅い昼食を働いている人達と一緒に頂きます奥さんの手料理です。その間も、妻が茶商と情報交換を盛んにします。
食後に工場を覗くと、甘い香りが漂い、もう生茶は完成しています。後は團揉と仕上げ乾燥で完成します。
早速試飲をすると、海抜1500mの紅香茶です。今朝からの作業行程を経て、完成は夜8頃になるでしょうが、生茶で香り味の良し悪しが判断はできます。素晴らしい香りと、春茶にしては力強いしっかりした味が私を惹きつけます。夜まで待つことは出来ません。30斤を注文します。
明日発送して貰い、明後日には我が家に到着します。台北の茶商は残った量を全部買うと言います。約100斤はあるでしょう。
携帯が鳴り妻が「鹿谷」の陳茶師からだと言います。「杉林渓茶」を発送するとの事、陳茶師の「杉林渓茶」春茶の入荷を聞き、期待に心が弾みます。
李さんの工場を後に、蘆山の茶農で茶師・張 漕泰氏の製茶工場に行きます。
2日前から生産を始めたと連絡があり、今日も製茶をしている筈です。製茶工場に着くと、事務所が賑やかで先客が5〜6人います。会計を担当の小凛(張さんの女友達)が先客を相手に試飲をしています。皆さんお茶が完成するのを待っているのです。張さんは睡眠不足で目を真っ赤にして、茶師達を相手に製茶に懸命です。むせ返るような香りの中で、10人位の人達が自分に与えられた仕事を効率よくこなして行きます。
張さんは製茶が始まると睡眠不足が続き、24時間体制でのお茶の生産が続きます。
張さんに招かれ事務所に入り、昨日製茶したお茶を試飲します。美味しいお茶ですが、昨夜製茶と同時に完売したお茶です。今日製茶中の生茶を続けて試飲します。今日のお茶の方が香り味共に優れています。価格交渉はすでに終わっていました。先客の茶商達が張さんと交渉済みです。私の分も20斤用意してあります。これで「蘆山茶」が入荷できます。海抜1400mで栽培した青心烏龍の銘茶です。
プロ好みのする「蘆山茶」は、製茶と共に茶商に買われ、現地に行かないと入手困難な稀少なお茶です。
張さんの工場内には仮眠部屋が3室あり、自由に使いなさいと張さんは言います。今日はこちらに泊まります。
台湾高山茶の人気ある産地のお茶は、限られた生産量です。茶商達は何としても手に入れて顧客に供給したいのです。そのため、いつの間にか自分で現地に出向き、買い付ける習慣が出来たのです。
張さんは「奇来山」海抜1700m〜1900mにも茶園があります。この次5/15の再訪時に「大禹嶺」と一緒にぜひ「奇来山」も私の分をとお願いしてありますが、確実な保障はありません。
3人の茶商はできあがったお茶代金を小切手で支払い、夜道を車で帰って行きました。残った台北から来た茶商と、桃園の茶商を交え、高山茶談義を夜遅くまでします。
梨山は私の情報で武稜が始まった他は1週間後の開始との事でしたが、台北の茶商は明日翠巒へ行くと言います。先程携帯で連絡したら天候さえ良ければ翠巒でも茶摘みが始まる様です。妻が早速翠巒の茶農に携帯で聞きますが、海抜1400〜1600mで一部の茶農が今日から茶摘みを始めたと聞きます。1500以上では未だ少し先になるとの話です。やはり1800m以上では1週間後が正解でしょう。 |
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幻の銘茶の産地・大禹嶺
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このトンネルを抜けると大禹嶺茶園が見える
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山道のあちこちで満開の石楠花
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蘆山の張 漕泰 茶師
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張茶師の製茶工場内
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製茶工程
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5/3
朝8時、お茶の飲み過ぎと慣れない仮眠室で、あまり睡眠は取れずじまいでしたが、張さんは大変です。休む暇もなく今日も茶摘み女達に指示をし、トラックに10人以上を乗せて茶畑まで送ります。
工場内は朝の一時静まり、茶葉の香りのみが漂っています。交通情報を聞いていた妻が昨夜「合歓山」頂上付近で濃霧による交通事故が発生し、事故処理のため一時交通止めの状態であると言います。私は大禹嶺まで戻り梨山に向かう予定でしたがまた予定変更です。昨年も確か土石流が翠峰で発生して、予定変更を余儀なくされたと記憶します。
仮眠室から茶商2人も起きて来ました。会計の小凛さんが買ってきた朝食を皆さんと食べます。張さんが戻り、翠峰〜梨山への幹線道路はまだいたる処で復旧工事中ですが、交通可能と言います。でも「華岡」海抜2200mなどは、いつも命がけで恐怖を感じる曲路の連続の道です。
張さんにお礼を言い「大禹嶺茶」と「奇来山茶」の念押しをして5/15の再会を約束します。茶商達とも別れの挨拶をし、蘆山を出発。悪路との戦いが2時間半続き「華岡」に着きました。
この幹線道路を挟み高山茶の産地が多く点在して、普通なら各産地を眺めながら楽しいドライブが出来る処ですが、悪路の運転に集中してその余裕はありません。
華岡は梨山茶の産地で最も高海抜に位置し、福寿山に隣接しています。最近はここで生産されるお茶の殆どが「福寿山茶」として市場に紹介されています。
味香り共に福寿山と同様か、それ以上の美味しいお茶を生産しますが、福寿山の名声で華岡の名は陰に隠れて表に出ません。茶商の間では華岡は福寿山同様評価の高い産地です。福寿山には個人の茶農はいません。華岡や梨山の2〜3の茶農が福寿山に茶畑を持ち生産をしている程度です。福寿山茶の7割は今でも「福寿山農場」で生産されています。
華岡の茶農・謝 建王氏(52歳)を訪れます。3年振りの再会です。携帯で妻が連絡したら、珍しく在宅中で歓迎するからと言ってくれますが、「春茶はまだよ!」だそうです。
華岡の集落は平地が無いと言ってもいい位少なく、急勾配の頂上にあり、水果や高原野菜の産地でもあります。昼時で、謝さん夫婦に昼食をご馳走になります。この辺りは自然を相手の生活で、素朴な人々が多く、原住民と共存しています。茶農は謝さんを入れて5人いますが、他の産地から権利を買取り、茶作りをする茶農も同数位は居る様で、栽培面積などはよく分りません。
お断りしてここからは私も「華岡茶」を「福寿山茶」とご紹介して参ります。
冬茶の軽焙火を頂きます。福寿山の特徴を充分に残し、焙火の濃厚さが加わり、一味楽しみが増すお茶で、私の購買意欲を掻き立てます。妻が横で私の素振りを見て価格交渉を始めます。謝さんもお茶に自信を持ち譲りません。このお茶なら1年間は味が変わらず楽しめると言い、量も多くないので安く売る気は無いと強気です。私は諦め切れず、謝さんの言値で5斤だけ買います。
春茶は天候さえ良ければ1週間後には開始されます。連絡をしてくれる様お願いして「梨山」に向かいます。華岡〜福寿山〜梨山までは車で30分です。
連絡しておいた茶農・羅 全棟氏の自宅に到着です。羅さんは梨山の茶農ですが、「武稜」に茶園があり、今日製茶をしていると連絡がありました。羅さんは茶師を鹿谷から呼び製茶する茶農で、梨山の茶葉で最高の茶師を使い、より高品質の梨山茶を目指しています。
昨日仕上げた「武稜茶」があり試飲します。最近花蓮の茶商・陳さんの店で試飲した「武稜茶」と比較しますが、甲乙付け難い香り味です。今日の生茶も試飲しますが、差はなく、昨日製茶の「武稜茶」10斤を買います。海抜1700mの梨山「武稜茶」です。水果香の甘い香りの梨山一番茶です。まだ量は少量で多くは生産出来ません。本格的な生産は1週間後になるでしょう。
この「武稜茶」は大禹嶺に近い味わいのあるお茶です。もう少し海抜が高ければ、偽者の大禹嶺として市場に出る事でしょう。理屈抜きに「いい香りの旨い」お茶です。午後4時、羅さんに別れを告げます。この街道は国道7号線です。8号線まで戻り梨山〜大禹嶺〜太魯閣〜花蓮市に夜7時半に無事帰宅しました。寝不足と悪路に悩まされ大変疲れた2日間でしたが、目的も達成でき充実した走行400kmの出張でした。 |
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合歓山からの風景
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武陵(合歓山の山頂)
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2005/07/03更新
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