台湾茶樂部屋〜茶商・兼子のお茶日記〜
兼兼子です。 今回は冬茶を訪ねる旅の2回目、 梨山(りーさん)、廬山(るーさん)、翠峰(すいほう)などの高山茶生産地を回りました。高山茶は台湾烏龍茶の中でも最高級のお茶です。特に梨山茶はその中でも最高峰とされています。

11月17日水曜日、曇り朝4時に起床、5時前に出発です。
私が住む花蓮には国立公園太魯閣渓谷がありますが、国道8号線はその中を通っています。そのため、山又山の険しい路で、台湾の中央山脈を越え花蓮と台中及び南投県を結ぶ唯一の横断道路です。

天祥、西寶を過ぎた辺りから急勾配になり、S字カーブの連続です。朝早く出掛けたお陰で霧もなく、車も少なく快適なドライブを楽しんでいる内に夜明けです。野生猿の群れに2度も会いました。

海抜2000mを超えると関原に到着。ここには、樹齢3000年(神木)を越す台湾檜が辺りを威圧するように悠然とそびえ立ち、冷気が漂い、防寒服が必要です。

梨山の中でも最も標高が高い太禹嶺(たーうーりん)地区には朝7時に着きましたが、まだ蘇さんの店は開店していません。そのまま梨山に向かいます。

梨山では、茶農家・羅さん宅に到着してすぐに昨夜電話で約束したお茶の商談を始めました。ところが、羅さんは歯切れが悪く、生産量がないと愚痴ばかりです。この冬は例年の約2割の生産しか出来ないそうです。品薄で価格も3割高です。

試飲の結果、価格に見合わないと判断して、私は羅さんのお茶を買うのを諦めました。その後、時間の都合もあり、霧社(むしゃ)に行きます。李茶師の工場に11時に到着して、昨夜製茶した翠峰茶を早速試飲しました。最高のお茶ですが残り量が僅かで3斤(1斤=600g)しかありません。このお茶を買い、次の製茶分は少量でも私にとお願いしました。買ったお茶は量がなく、残念ですが日本の皆様にご紹介できません。

李さんは霧社茶区で1、2位の生産を誇る茶農ですが、この冬はやはり量がなく、製茶日には茶商が来て待っていて、製茶したお茶はその場で売り切れてしまいます。昨夜は5斤の量を約束したのですが、量が思ったよりも出来ず、私が買えたのは3斤でした。

お昼になり、14号線沿いの廬山一帯が一望できる場所で、妻が持参の手弁当を食べます。小休止のあと廬山の張茶師の工場に行きます。

張茶師には昨夜TELで驚く情報を聞いていました。張茶師も今年自分の茶畑からの生産量は2割くらいで、8割減と言います。廬山茶を予約しても中々私には回って来ません。そこで張茶師は梨山の中でも最高級の太禹嶺茶を私に売ると言ってくれました。

張茶師がなぜ太禹嶺茶を持っているのか疑問ですが、価格を聞き、また驚きました。安いのです!この時期高山茶は殆ど入手困難で価格も割高なので、半信半疑です。ただ、太禹嶺茶の生産は9月末から10月の始めで、今年の冬茶は豊作との情報はありました。

張さんは私達夫婦を待っていて、着くと直ぐに試飲しました。半円球の茶葉から発散する香りは、正しく太禹嶺茶特有の香りです。茶葉は春茶に比べやや大きめですが、私の友人の茶商・陳さんが以前太禹嶺冬茶を買い、その時に試飲もさせてもらったので、今年の太禹嶺冬茶は知っています。おなじ茶葉です!

試飲用のマグカップに約3gの茶葉を入れ、200ccの湯を注ぎ、蓋をして待つこと3−4分。蓋をとり茶葉が完全に開く状態を確認して、レンゲを茶湯に浸します。このレンゲの裏を鼻に近づけて香りを嗅ぐのです。
他の高山茶では、嗅ぐことの出来ない、甘い花蜜にも砂糖黍にも似た、気品ある優雅な香りは最高峰の証明です。

次に、レンゲで茶湯をすくい茶碗に入れます。水色はどこまでも透明で透き通り、青みのある薄黄色です。
茶碗から口の中に少量のお茶を流し込み、味を見ます。硬さや角のなく、まろやかでコクのある味です。
甘みが口中に広がり、その後から微かで上品な苦味、渋みが調和よく伝わります。まったりした味は正に桃源郷の境地です。また、喉越しはすっきりして爽やかで最高級のブランデーやスコッチにも共通しています。何時までも残る甘い余韻は太禹嶺茶だけの特権です。

正しく本物の太禹嶺茶です。鹿谷郷の茶師 聰 明(字名)のお茶だそうです。でも、どうして張茶師が持っているのでしょう。その疑問を聞いて見ました。

張茶師の答えはこうでした。
「太禹嶺茶を製茶する時には多くの人手が必要です。私は聰明氏を知っていて、今年の冬茶を製茶する時も声を掛けられ手伝いをしました。日当賃金は、いつも出来上がった太禹嶺茶で支払われるのです。このお茶は私の働いた分のお茶ですが、今年は自分のお茶が少なく約束通りにお茶をお分け出来ません少量ですが貴方にお売りします」

量は15斤ですが、張茶師は10斤を私に、残りは自分用に残したいと言われます。太禹嶺は高価な梨山茶のなかでもトップクラスのお茶で、高額なのはあたりまえです。しかし、張茶師は予想していたより遙かに安い価格を言ってきました。

私は張茶師が間違えていると思い、念を押してみますと、
「何時もこの価格で売るわけではありません。今回は特別です。約束のお茶を提供できず、お詫びの気持ちです。わざわざお見えになったのを、手ぶらで帰すのは私の面子に関ります」との答えです。
台湾にも心意気や義理人情の通じる人がいます。張茶師には、最近約束事を反故にされた事が一度ありますが、忘れずにいて今回の太禹嶺茶を一般の価格よりも安く私に提供して頂きました。張茶師に感謝!感謝!

今日は、出来れば鹿谷まで行きたいと思い、時計を見ると4時です。張茶師に心からお礼をして、また張茶師のお茶が出来たら少しでも私の分を頂ける様に御願いしてお別れします。
国道14号線を埔里まで走り、国道21号線に移り水里迄行き、国道16号乙線に右折して走り、国道3号線を左折名間に着きます。県道151号線に入ると鹿谷郷です。

茶師で民宿も経営している劉さん宅に今回もお世話になります。夕食後にお茶を頂ながらお茶情報を聞きました。今冬の杉林渓龍鳳峡高山茶は、品薄で高価、凍頂烏龍茶も品薄で高価と劉さんは言います。どうも平地も高山茶の品薄に便乗しているようです。
陳茶師に連絡しました。9月に初めてお会いし、合歓山茶を予約して11月になってお茶が出来ないと最初に予約取り消しをされた人です。明日会う約束をして黄茶師にも電話し午後1時にセットこれで今日は終わります。

梨山地区の茶畑
11月19日木曜日、晴れ、朝9時、爽やかな日和で、珍しく湿気が少なく、鹿谷の風景に見事に調和しています。陳茶師のお店の前は麒麟譚。その背景に凍頂山が、山の中腹をカットしたような平らな山頂です。この景色だけで観光スポットになるでしょう。

陳茶師夫妻は笑顔で向かえてくれます。
「合歓山茶はないが、杉林渓龍鳳峡茶は少しあるよ」と言いながら、お茶を淹れてくれます。標高1700mの龍鳳峡で、2日前に製茶したお茶です。
流石です。高貴な甘い蘭香、すっきりした舌触りにまろやかさが加わり、繊細な甘みの中にお茶の渋みが絶妙です。苦味は殆ど感じず、のど越しや余韻も申し分ありません。
高価なお茶ですが台湾のお客様からのご要望があり、「10斤ください」と言いますと「5斤にしてほしい」と言われました。陳茶師の所には、本当にお茶がありませんでした。

彰雅村内は、あちこちにお茶の店舗があり、2、3の店を覗いて情報を収集します。少しのお茶はありますが、押し並べ高値で品質もよくありません。大きな店には有名ブランドが揃っていました。
阿里山茶がほしいので試飲しました。価格はこの時期にしては魅力な値段です。しかし、よく味見をします
と、どうも秋茶の様です。結局は買わずに店を出ました。

洒落たコーヒーハウスでランチタイムを楽しみ、午後1時に黄茶師の店に行きます。黄茶師は前回ご紹介した、若手のホープです。今までは茶梅を買っていますが、お茶の買い付けは初めてです。
若い夫婦が待っていました。海抜1300mの杉林渓茶です。私のために10斤を残して、全部売りましたと黄茶師は得意顔で言います。試飲すると、海抜1300mにしては良いお茶です。価格が高過ぎたので、交渉しますたが負けました。美味しいお茶を飲んだ後、味に惚れた弱みです。10斤やっと買えました。

黄茶師からこのあと私がほしい阿里山茶を買う事が出来ました!
黄茶師は常連客に頼まれ、友人である石卓の張茶師から30斤の阿里山石卓茶を分けてもらい、常連客に20斤売り10斤在庫があると言います。
早速試飲しました。海抜1200mの軽焙煎茶ですが、価格を聞き即買いました。
時間は、午後3時。今から花蓮まで約200kmの帰路です。2日間で40斤余りの買い付けがどうにか出来ましたが、何といっても太禹嶺茶が一番の収穫でした。
阿里山石卓地区
・第二回 文山包種茶について

・第五回  今年の冬茶について
〜高山茶生産地(梨山ほか)より〜

・第八回 台湾茶の品評会【比賽】
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