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幼い頃、夏休みには茅ヶ崎にあった母の里に預けられました。祖父母が住むその家は海の近くの松林にあり、泳ぎに行くときは家で水着に着替え、庭先から畑を通って浜に出ます。畑には胡瓜や茄子、南瓜、西瓜などが青々と植えられていて、夏草の草いきれがむせ返るようでした。草で足を切らないように気をつけてと言われていたので、浮き袋を背負い足元を見ながら祖父に手をとられ歩いて行きました。祖父母の家に預けられたのは、もちろん海で遊べるからでもありますが、同時に行儀見習いのためでもありました。
庭の松ぼっくりを竈にくべて、火吹きでご飯を炊いたり、五右衛門風呂を沸かしたり、熱心なクリスチャンであった祖父母からお祈りも習いました。また、毎日夕ご飯のための胡瓜やトマトなどを畑に採りに行くのも私の仕事で、蔓にぶら下がった胡瓜のイボが鋭くて痛かったことを覚えています。
祖父母の暮らしは、何事ににつけて質素でした。食事も旬のものをそのまま楽しむような、素朴な食卓だったと覚えています。採りたての野菜は、夏のほてりを含んだ美味しさがありました。そんな夏の暮らし中で、素材の本当の美味しさを知ったように思います。
以前は皆、夏休みには子供を連れて父や母の里へ帰ったものです。里に帰り祖父母や親戚、近所の大人から子供たちは色々な事を学びました。第一に教えられたことは、忍耐と我慢ではなかったかと思います。胡瓜に触れる度に、厳しかったけれど温かく見守ってくれた楽しい夏の日々を思い出し、今更ながら、祖父母に感謝しています。
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